【数学的帰納法】の考え方と、不等式を証明するときのポイント

数学的帰納法数列
Photo by Siyuan on Unsplash

今回は数学的帰納法を使った証明の方法について解説しています。

数学的帰納法?何それ??

という人は、第1章「数学的帰納法とは?」から読んでください。


一方、

数学的帰納法は知ってるけど、不等式の証明になると分からない・・・

という人は、第2章「数学的帰納法と不等式」から読んでもらって大丈夫です。


スポンサーリンク

1. 数学的帰納法とは?

数学的帰納法とは(結論)

数学的帰納法とは、数学における証明手段の一つです。


数学的帰納法

ある命題 \(P\) が、全ての自然数 \(n\) について成り立つことを示すとき、

次の (i) , (ii) が成り立つことを示せばよい。

(i) 命題 \(P\) が \(n=1\) のときに成り立つ

(ii) 命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(n=k+1\) のときも成り立つ


数学的帰納法のイメージ

なんでさっきの (i) と (ii) を示すと、

全ての自然数 \(n\) について成り立つことが言えるの?

といった疑問を解決しましょう。


(ii) で \(k=1\) とすると、

\(n=1\) のとき成り立つとすると、\(n=2\) のときも成り立つ」

となります。


(i) より \(n=1\) のときは OK だったので、\(n=2\) でも成り立つことがわかります。



さらに、(ii) で \(k=2\) とすると、

\(n=2\) のとき成り立つとすると、\(n=3\) のときも成り立つ」

となります。


\(n=2\) で成り立つことは先ほど示したので、\(n=3\) でも成り立つことがわかります。


これを無限に続けていけば、全ての自然数 \(n\) に対して成り立つことが確認できます!



このように、次々と成り立っていく様子から、

数学的帰納法はよくドミノ倒しと例えられます。


数学的帰納法のポイント

いつ使う?

数学的帰納法は、「全ての自然数に対して成り立つ」ということを示したいときに有用です。

逆に、実数や有理数の範囲では、数学的帰納法は役に立たないです。


ですが、自然数の範囲だからと言って、必ずしも数学的帰納法が使えるとは限りません。


そして、数学的帰納法は手間がかかることが多いので、

「他の方法で示した方が簡単でした〜^^」

みたいなことが多々あります。



なので、「全ての自然数に対して成り立つ」パターンの問題を見たら、

「これは数学的帰納法かな?」

と疑いつつ、

「別の方法でもっと簡単に示せないかな?」

と一度考えると良いでしょう。


どう使う?

数学的帰納法では、

(i) 命題 \(P\) が \(n=1\) のときに成り立つ

(ii) 命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(n=k+1\) のときも成り立つ

の2つを示すのでした。


(i) の方は \(n=1\) を代入するだけで示せるので超簡単です。


一方、(ii) を示すことは難しいことが多いです。


(ii) では「命題 \(P\) が \(n=k\) のときに成り立つ」ことは仮定として使用できます。


この仮定をうまく用いて、「\(n=k+1\) でも成り立つ」ことを示すというのが数学的帰納法の流れになります。


スタートが n=1 でないとき

数学的帰納法の (i) を

(i) 命題 \(P\) が \(n=2\) のときに成り立つ。

にしてみます。


このとき、(ii) を繰り返し適用すれば、\(n=2,3,4,\cdots\) に対して命題 \(P\) が成り立つことがわかります。

しかし、\(n=1\) のときに成り立つとは限りません。


このことを利用すれば、

ある命題 \(P\) が、全ての \(2\) 以上の自然数 \(n\) について成り立つ」

を示すときは、次の (i) と (ii) を示せばよいことがわかると思います。

(i) 命題 \(P\) が \(n=2\) のときに成り立つ

(ii) 命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(n=k+1\) のときも成り立つ

(ii) はそのままだね!


同じように、

ある命題 \(P\) が、全ての \(3\) 以上の自然数 \(n\) について成り立つ」

を示すときは、

(i) 命題 \(P\) が \(n=3\)のときに成り立つ

(ii) 命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(n=k+1\) のときも成り立つ

を示せばよいです。

\(4\) 以上についても同様だね!


例題

例題1

\(n\) が自然数のとき、\(4^n-1\) が \(3\) の倍数であることを証明せよ。


 例題1の解説 

実際に、

\(n=1\) のときは、\(4^1-1=4-1=3\)

\(n=2\) のときは、\(4^2-1=16-1=15\)

\(n=3\) のときは、\(4^3-1=64-1=63\)

となるので、ちゃんと \(3\) の倍数になりそうな感じはします。


ですが、\(n=4,5,6,\cdots\) と地道に計算していては、いつまで経っても終わりません。

そこで登場するのが数学的帰納法です。

数学的帰納法は

「全ての自然数 \(n\) に対して成り立つ」

を示すときに非常に有用だったね!


ということで、

\(n\) が自然数のとき、\(4^n-1\) が \(3\) の倍数である」

を命題 \(P\) として、まずは、

(i) 命題 \(P\) が \(n=1\) のときに成り立つ

について示しましょう。


と言っても、これは先ほど確認したように、

\(n=1\) のときは、\(4^1-1=4-1=3\)

となり、ちゃんと \(3\) の倍数になっているので (i) は OK です!


あとは、

(ii) 命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(n=k+1\) のときも成り立つ

を示しましょう。


命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(4^k-1\) は \(3\) の倍数になります。

よって、自然数 \(a\) を用いて、

$$4^k-1=3a \tag{*}$$

と表すことができます。


示したいことは、命題 \(P\) が \(n=k+1\) でも成り立つこと、つまり、

\(4^{k+1}-1\) が \(3\) の倍数となること

です。


ということで、\(4^{k+1}\) を作るために、(*) の両辺に \(4\) をかけてみます。

すると、

$$4^{k+1}-4=12a$$

となり、変形すると、

$$4^{k+1}-1=12a+3=3(4a+1)$$

となります。


\(4a+1\) は整数なので、\(4^{k+1}-1=3(4a+1)\) は \(3\) の倍数です。


よって、命題 \(P\) は \(n=k+1\) のときも成り立つことがわかりました!


これで、数学的帰納法の (ii) も OK なので、全ての自然数 \(n\) に対して 命題 \(P\) が成り立つことが示されました!

(例題1終わり)



スポンサーリンク

2. 数学的帰納法と不等式

数学的帰納法は \(A>B\) のような不等式を証明するときでも使うことができます。


不等式の方が、等式を示すときより苦手と感じる人の方が多いようです。


最初に例題で確認した方がわかりやすいと思うので、まずは次の例題に取り組みましょう!


例題

例題2

\(n\) が \(4\) 以上の自然数のとき、\(2^n>n+10\) が成り立つことを数学的帰納法を用いて示せ。


 例題2の解説 

「\(2^n>n+10\) が成り立つ」ことを、命題 \(P\) とします。


示したいことは、命題 \(P\) が \(4\) 以上の全ての自然数 \(n\) に対して成り立つということです。


第1章で解説したように、\(n\) のスタートが \(1\) ではなく \(4\) のときは、

(i) 命題 \(P\) が \(n=4\) のときに成り立つ

(ii) 命題 \(P\) が \(n=k\) のとき成り立つとすると、\(n=k+1\) のときも成り立つ

の2つを示せば良いのでした。


(i) は簡単ですね。

\(n=4\) のとき、

$$2^n=2^4=16$$

$$n+10=4+10=14$$

となるので、\(n=4\) のときは OK です。


次に (ii) を示しましょう。

\(n=k\) のときに、命題 \(P\) が成り立つと仮定します。


つまり、

$$2^k>k+10 \tag{*}$$

が成り立つと仮定します。


このときに、\(n=k+1\) のときも、命題 \(P\) が成り立つということ、

つまり、

$$2^{k+1}>(k+1)+10$$

$$2^{k+1}>k+11$$

が成り立つことを示せば良いです。


\(2^{k+1}\) が欲しいので、とりあえず(*)の両辺に 2 をかけてみます。


すると、

\(2^{k+1}\) \(>\) \(2k+20\)

となります。


一方、示したいことは

\(2^{k+1}\) \(>\) \(k+11\)

でした。


え、\(2k+20\) を変形しても \(k+11\) にはならなくない…?

と思うかもしれませんが、よく考えてみましょう。


\(k\) は自然数なので、\(2k\geq k\) ですよね?

そして、当たり前に \(20>11\) ですよね?


ということは、2式を合わせて

\(2k+20\) \(>\) \(k+11\)

ということがわかります。


よって、先ほど

\(2^{k+1}\) \(>\) \(2k+20\)

を示しましたが、

\(2k+20\) \(>\) \(k+11\)

であることを踏まえれば、

\(2^{k+1}\) \(>\) \(k+11\)

であることがわかりました!


これで (ii) も示せたので、数学的帰納法により、\(n\) が \(4\) 以上の自然数のとき \(2^n>n+10\) が成り立つことが示されました!

(例題2終わり)



不等式の数学的帰納法のポイント

不等式 \(f(n) > g(n)\) を数学的帰納法で示したいとしましょう。


不等式の数学的帰納法で最も厄介なのは、(ii) を示すとき、つまり、

\(f(k)>g(k)\) ならば、\(f(k+1)>g(k+1)\) が成り立つ

を示すときに、右辺や左辺が示したいものと違う式になることがあるということです。


具体的に、例題2では

\(2^{k+1}\) \(>\) \(k+11\)

を示したかったのに、実際に得られた式は、

\(2^{k+1}\) \(>\) \(2k+20\)

となり、右辺が違った式になっていました


このときは焦らずに、それぞれの右辺を比較してみましょう。

つまり、

\(k+11\)\(2k+20\) はどっちが大きいかな?

と考えてみるのです。


すると、例題2で解説したように、\(k+11\) \(<\) \(2k+20\) であることがわかるので、

\(2^{k+1}> \) \(2k+20\) \(>\) \(k+11\)

といった具合にして証明ができます。




それがよくわかんないんだよ・・・

という人もいると思います。


ですが本来は、不等式の証明は等式の証明よりも簡単なはずです。


なぜなら、等式の証明は”ぴったり”になることを示すのに対して、

不等式の方は、大きいか小さいかの”2択”を示すだけなので融通が効くと思います。


例えば、東大の入試問題に

「\(\pi>3.05\) を示せ」

みたいな問題がありましたが、何も”ぴったり” \(3.05\) になることを示す必要はありませんよね?


\(3.1\) や \(3.14\) より大きいことを示せば、その時点で \(3.05\) よりも大きいことを示せたことになります。


数学的帰納法の場合も同じです。

\(f(k+1)>\) \(g(k+1)\) を示すときに、\(f(k+1)>\) \(X\) となってしまったとしても、

そもそも \(X\)\(g(k+1)\) より大きければ、\(f(k+1)> \) \(X\) \(>\) \(g(k+1)\) となるので、ちゃんと\(f(k+1)>\) \(g(k+1)\) を示せたことになります。


このように、数学的帰納法で不等式を示すときは、“ぴったり” 示す必要はなく、「大きいか小さいかの二択さえ示せればいい」というイメージを持つといいです!



結論として、ポイントは次のようになります!

数学的帰納法で不等式を証明するポイント

ゴールとなる不等式 \(f(k+1)>\) \(g(k+1)\) と、

実際に得られた不等式 \(f(k+1)>\) \(X\) を 比較して、

\(g(k+1)\)\(X\) の大小を比較する!


数学的帰納法と不等式

練習問題

ここまでの内容を踏まえて、不等式のパターンの問題をもう一度解いてみましょう!

例題3

\(n\) が自然数のとき、

$$(2n)!\ge 2^n(n!)^2$$

となることを示せ。


 例題3の解説 

(i) はさっさと示してしまいましょう。


\(n=1\) のとき、

$$(2\times 1)!=2!=2$$

$$2^1\times (1!)^2=2\times 1=2$$

より、\(2\) は \(2\) 以上なので、\(n=1\) のときは OK です。


あとは (ii) を示しましょう。


つまり、

$$(2k)!\ge 2^k(k!)^2 \tag{*}$$

が成り立つと仮定して、

$$\{2(k+1)\}!\ge 2^{k+1}\{(k+1)!\}^2 \tag{*}$$

が成り立つことを示しましょう。


\(\{2(k+1)\}!=(2k+2)!\) \(= (2k+2)(2k+1)(2k)!\)

となり、右辺に (*) を用いると、

$$\{2(k+1)\}!\ge 2(k+2)(2k+1)2^k(k!)^2$$

計算して、

$$\{2(k+1)\}!\ge(k+2)(2k+1)2^{k+1}(k!)^2$$

ということがわかりました。


一方、示したいこと(ゴール)は、

$$\{2(k+1)\}!\ge 2^{k+1}\{(k+1)!\}^2$$

でした。


となると、

$$(k+2)(2k+1)2^{k+1}(k!)^2> 2^{k+1}\{(k+1)!\}^2$$

になっていれば嬉しいですよね?


\(k\) は自然数なので、\(k+2>k+1\) と \(2k+1>k+1\) になりますよね?


ということは、

\(\begin{align}
&(k+2)(2k+1)2^{k+1}(k!)^2\\
&\quad > (k+1)(k+1)2^{k+1}(k!)^2 \\
&\quad = 2^{k+1} (k+1)^2 (k!)^2\\
&\quad = 2^{k+1} \{(k+1)!\}^2
\end{align}\)

となるので、

$$(k+2)(2k+1)2^{k+1}(k!)^2> 2^{k+1}\{(k+1)!\}^2$$

であることがわかります。


よって、

$$\{2(k+1)\}!\ge(k+2)(2k+1)2^{k+1}(k!)^2$$

と合わせると、

$$\{2(k+1)\}!\ge 2^{k+1}\{(k+1)!\}^2$$

となるので、\(n=k+1\) のときも OK です!


これで (ii) も示すことができたので、数学的帰納法より証明終わりです!

(例題3終わり)



おまけ:数学的帰納法とハゲの証明!?

数学的帰納法を使えば、次のような証明ができちゃいます。


ハゲのパラドックス

全ての人はハゲである。


「は?」という感じですが、とりあえず証明してみます。


まず、髪の毛が1本の人はハゲですね(断定)


次に、髪の毛が \(k\) 本の人がハゲだとします。


このとき、髪の毛が \(1\) 本増えて \(k+1\) 本になったところで、ハゲはハゲです。


よって、数学的帰納法により髪の毛が何本だろうとハゲになります。


ハゲのパラドックス



こんな感じで、全ての人がハゲということが数学的帰納法で示せてしまうのです。


マジレスすると、ハゲが数学的に定義されていないのでこのようなパラドックスが生じるのですが、

数学でこのようなことが証明できると思うと面白いですよね!

数列数学B
スポンサーリンク
OchibaAtsuoをフォローする
ますますmathが好きになる!魔法の数学ノート

コメント

タイトルとURLをコピーしました